サロモンの登山靴で失敗しない選び方|シリーズ別の違い・サイズ感・向いている山がわかる

サロモンの登山靴はX ULTRA・QUEST・360などシリーズで性格が大きく違います。現行モデルの選び分け、幅広の人のサイズ選び、「滑る」と言われる理由、ソール張替え不可という弱点まで、X ULTRA 5 MID GORE-TEXを実際に履いて確かめた内容で解説します。

サロモンの登山靴で失敗しない選び方|シリーズ別の違い・サイズ感・向いている山がわかる
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「サロモン」と聞いて、まずトレイルランニングのシューズや、街で見かける厚底のスニーカーを思い浮かべる人は多いと思う。実際、Googleで「サロモン 登山靴」と検索すると、関連する質問の一番上に「サロモンは登山靴ですか?」が並ぶ。それくらい、登山靴のブランドとしては誤解されている。

結論から言うと、サロモンは登山靴を作っている。ただし、その成り立ち——スキーのビンディング屋から始まり、トレイルランニングを経由して山の靴にたどり着いた——が設計思想にそのまま出ているので、革の登山靴を思い浮かべて買うと、間違いなく期待とズレる。

この記事では、次のことが分かるように書いた。

  • 現行シリーズ(X ULTRA 5 / X ULTRA 360 / QUEST / TRACKER / WINTER)の違いと、自分が選ぶべき1足
  • 失敗しやすいサイズ選び。幅広・甲高の人がどうすればいいか
  • 「サロモンの登山靴は滑る」と言われる理由と、実際どうなのか
  • ソールの張り替えができないという、買う前に知っておくべき弱点
  • 過去モデル・廃盤モデルをいま買うときの注意点

筆者は会社勤めをしながら月1〜2回、関西の低山を中心に登っている。いま履いているのはX ULTRA 5 MID GORE-TEXで、[要記入:購入時期と使用回数]。カタログの転記ではなく、履いて分かったことを書く。

結論:サロモンの登山靴は「シリーズ選び」でほぼ決まる

サロモンの登山靴で失敗する人のほとんどは、モデルの性格を取り違えている。日帰り用の靴でテント泊縦走に行けば足は終わるし、縦走用の硬い靴で低山を歩けば「重くて疲れる靴」という感想になる。先に結論として、選び分けの早見表を置いておく。

こんな山行選ぶシリーズカットひとこと
低山〜中級山岳の日帰り(最も多い)X ULTRA 5ミッド / ロー迷ったらこれ。GORE-TEX版とWIDE版あり
ハイキング中心。街でも履きたいX ULTRA 360ミッド / ロー価格が抑えめ。デザインが街寄り
テント泊・重装備の縦走QUESTハイ4Dシャーシで足首とかかとを固定
整備された道を軽快に歩きたいX ULTRA TRACKER / CROSS HIKEロー / ミッドトレランシューズ寄りの軽さ
冬の低山・緩い雪の道X ULTRA MID WINTER CS WPミッド保温材入り。ただし本格雪山は別ジャンル
Memo

日帰り中心で「とりあえず1足」なら、X ULTRA 5 MID GORE-TEXを基準に考えて外さない。私もこれを履いている。幅広・甲高の人は同じモデルのWIDEから試着するのが近道。

そもそもサロモンは、登山靴のブランドなのか

サロモンは1947年、フランス・アヌシーで創業した。始まりはスキーのエッジを削る小さな工房で、そこからスキーのビンディング(金具)へ進み、1972年にはビンディングで世界的な地位を築いている。つまり出発点は、登山靴どころか靴ですらない。

山の靴を作り始めたのは1990年代後半。2005〜06年ごろにアドベンチャーレース向けの製品群をトレイルランニングへ寄せたあたりから、いまのサロモンのイメージが固まっていく。そして2012年、日帰りハイキング向けのシリーズとしてX ULTRAが登場した。X ULTRAは「玄関を出てから帰ってくるまで一足で済ませる」という発想で設計されたシリーズで、これが現在の主力になっている。

この経歴は、履いたときの感触にそのまま出る。

  • 軽い。走る道具の延長線上にあるので、同クラスの革靴系より軽く仕上がっている
  • 足入れがスニーカーに近い。硬い靴に慣れていない人でも、いきなり違和感なく歩ける
  • ソールは「硬くしすぎない」方向。重荷を背負って岩稜を歩く道具ではなく、身軽に速く歩く道具として作られている

伝統的な登山靴ブランドが「重い荷物を背負って長く歩く」ところから靴を考えるのに対し、サロモンは「速く、正確に足を運ぶ」ところから考えている。良し悪しではなく、出発点が違う。ここを理解して選べば、サロモンはかなり強い。

現行シリーズの違い。X ULTRA 5・360・QUEST・TRACKER・WINTER

X ULTRA 5 —— 日帰りの主力。迷ったらここから

現行のX ULTRAの最新世代で、サロモンの登山靴と言われて多くの人が想像するのがこれ。アッパーにはMatryxという、ケブラーなどの糸を織り込んだ耐摩耗性の高い生地を使い、靴底はAll Terrain Contagrip、内部にAdvanced Chassisという横ブレを抑える構造が入っている。

カット(高さ)は2種類、さらに防水の有無と足幅で枝分かれする。

  • X ULTRA 5 MID GORE-TEX:足首まで覆うミッドカット+防水。カタログ重量は片足393g(サイズにより変動)
  • X ULTRA 5 GORE-TEX:ローカット+防水。軽快だが足首の保護はない
  • X ULTRA 5 WIDE / MID WIDE:幅広モデル。前足部のボリュームが標準比で約12mm増える

細かいが重要な違いとして、ミッドカットは普通の靴紐、ローカットは引くだけで締まるQuicklaceという違いがある。Quicklaceは速いが締め具合の微調整がしにくく、靴紐は面倒だが甲の圧迫を部分的に逃がせる。甲高で圧迫が気になる人は、ミッドの靴紐モデルのほうが合わせやすい。

X ULTRA 360 / 360 EDGE —— 街と山を1足でまたぐ

X ULTRA 5より価格が抑えめで、デザインが街寄り。重量は418g前後、素材の約49%が再生素材という環境配慮モデルでもある。ソールの硬さは控えめで、日帰りハイクや低山向け。キャンプや旅行に兼用したい人にはこちらのほうが使い勝手がいい。

QUEST —— 重い荷物を背負う人のための硬い靴

テント泊縦走や重装備を想定したハイカットで、4D Advanced Chassisという足首まわりの剛性を上げる構造が入る。ザックが重くなるほど、足首のわずかなブレが疲労と捻挫に直結するので、そこを靴で止めにいく設計。逆に、日帰りで荷物が5kg程度なら、この硬さは持て余す。

X ULTRA TRACKER / CROSS HIKE —— 軽さを優先する人へ

トレイルランニングシューズと登山靴の中間にあたるライン。整備された登山道や里山歩きでは快適だが、ゴツゴツした岩場や、足場が不安定な急斜面では保護が物足りなく感じる場面がある。

X ULTRA MID WINTER CS WP —— 冬の低山まで

保温材が入った冬向けモデル。雪の低山や、凍結した林道程度なら十分に戦える。ただしアイゼンを前提にした本格的な雪山登山は対象外で、そこは冬靴(いわゆるアルパインブーツ)の領域になる。「サロモンで雪山に行きたい」と考えている人は、ここの線引きを間違えないほうがいい。

ローカットとミッドカット、どちらを選ぶべきか

迷ったときの判断軸はシンプルで、「荷物の重さ」と「下りでの不安」の2つでいい。

  • 日帰り・荷物5kg前後・整備された道が中心 → ローカットで軽快に歩ける
  • 荷物が重い / 下りで足首が不安 / 岩や木の根が多い道 → ミッドカット

私はミッドカットを選んでいる。理由は後述するが、足首が止まると、下りで景色を見る余裕が生まれるからだ。

過去モデル・廃盤モデルの系譜と、中古で買うときの落とし穴

X ULTRAは2012年に始まり、世代を重ねてきたシリーズだ。2018年以降だけで累計1,000万足以上が売れているとサロモン自身が公表している。世代が変わるたびに旧モデルは値下がりするので、型落ちを狙うのは合理的な買い方に見える。

主な歴代モデルは次のとおり。

  • X ULTRA 3:長く定番だった世代。中古市場でもまだ見かける
  • X ULTRA 4:2021年春に登場。前世代から大幅に設計が変わった世代
  • X ULTRA MID 2 GTX などの旧世代:ブログのレビューが多く残っている

ただし、型落ちや中古には無視できない注意点がある。ミッドソールにポリウレタンを使った靴は、加水分解で劣化する。サロモン自身も、ポリウレタン製ミッドソールの製品について「一般的には製造後5年程度がその寿命」と案内している。未使用の保管品であっても、製造から年数が経っていれば、ある日ソールが崩れる。

Caution

中古やアウトレットで旧モデルを買うときは、値段より先に製造からの経過年数を確認する。「新品未使用」は「劣化していない」という意味ではない。山の中でソールが剥がれると、下山そのものが危うくなる。

※ 加水分解と寿命の目安は、サロモンの公式サポート(登山ブーツのソールに関する案内)の記載にもとづく。

X ULTRA 5 MID GORE-TEXで岩湧山を歩いた

ここからは実際に履いた話を書く。登ったのは岩湧山(大阪府河内長野市・標高897m)。和泉山脈の第二の高峰で、全長45kmのダイヤモンドトレールの一角にある。山頂一帯がカヤト——ススキなどの草原——になっていて、秋には銀色の穂が波打つ。大阪平野から金剛山、遠く六甲山系や明石海峡大橋まで見渡せる山だ。[要記入:岩湧山のルート]

クッション性と足首の安定感で、上りも下りも楽になった

最初に体感したのは、着地したときの突き上げの少なさだった。硬すぎず柔らかすぎず、岩や階段を踏んだ衝撃が、そのまま膝まで来ない。トレイルランニングの緩衝設計を引き継いでいる部分だと思う。

そしてミッドカットによる足首のホールドが効く。木の根や浮き石に乗って足首がぐらつきかけたとき、靴が先に止めてくれる感覚がある。地味に聞こえるが、これは疲労の総量が変わる話だ。足元が不安だと、人は無意識に一歩ごとに体を硬くする。その緊張が後半に効いてくる。靴が止めてくれると分かっていると、歩きが雑にならないまま、力が抜ける。

下りはさらに差が出た。岩湧山の下りは階段状に整備された区間があって、ここは足首と膝が消耗しやすい。それでも「早く終わってほしい」と思う下りにはならなかった。

ぬかるみでも、中は乾いたままだった

前日の雨で登山道の一部がぬかるんでいたが、くるぶしの高さまで泥に入っても内部は濡れなかった。GORE-TEXのメンブレンが入っているのだから当然と言えば当然なのだが、防水性というのは結局、一度「濡れなかった」経験でしか信用できない。耐水圧の数値を見ても、山の中で靴がどうなるかは想像できない。

もうひとつ書いておくと、ミッドカットは泥や小石が中に入りにくい。ローカットで同じ道を歩くと、下山後に靴下がざらつく。この差は地味に大きい。

長時間歩いても、終盤の一歩が重くならない

重い登山靴を履いていると、終盤に「足が上がらない」瞬間が来る。カタログ重量は片足393g前後(サイズにより変わる)で、これは登山靴としては軽い部類だ。[要記入:実測重量]

軽さだけではなく、足を包む形が合っていることも大きいと思う。靴の中で足が遊ばないので、一歩ごとの微調整に使う筋力が減る。「疲れにくい靴」の正体は、クッションよりもフィットのほうにあるというのが、履き替えて分かったことだった。

「サロモンの登山靴は滑る」は本当か

検索すると必ず出てくるのがこの話題なので、正面から書く。結論は「条件による」。ただし、その条件がはっきりしている。

路面Contagripソールの相性
乾いた土・落ち葉・ザレ場・砂利強い。よく噛む
乾いた岩問題なし
濡れた木道・木の根・階段の木滑りやすい
苔のついた岩・粘土質の泥滑りやすい
残雪・凍結路面専用モデル以外は苦手

ここで大事なのは、濡れた木道と苔の岩は、どんなメーカーの靴でも滑るということだ。表面が平滑な場所では、ソールのラグ(突起)が引っかかる先がないので、そもそも靴の性能差が出にくい。「サロモンだから滑った」ではなく「そこは滑る場所だった」というケースがかなり混ざっている。

そのうえで、サロモン特有の事情もある。ラグの溝が細かい分、泥が詰まると排水できず、水の膜の上を歩く状態になる。粘土質の泥道を長く歩いた後にツルッといくのは、たいていこれが原因だ。

実践している対策

①泥道を抜けたら、石や倒木の角でソールの泥を落とす。②濡れた木道は、つま先や踵ではなく足裏全体で垂直に置く。③苔のついた岩には乗らず、迂回する。この3つで、滑ってヒヤッとする回数は確実に減る。

サイズ選びで一度失敗した話と、そこから変えたこと

私は以前、別ブランドのローカット靴で、下山中にかかとの靴擦れを起こしたことがある。皮が剥けて、駐車場に着くころには歩き方がおかしくなっていた。原因はシンプルで、サイズが合っていなかった。つま先に余裕がなく、下りで足が前に詰まり、その反動でかかとが靴の中で上下に動いていた。

この靴を買うときは、同じ失敗をしないために次の3つを徹底した。[要記入:サイズ]

  • 登山で履く厚手の靴下を持参して試着する。薄手の靴下で合わせると、本番で必ずきつくなる
  • つま先に指1本分(約1cm)の余裕を確保する。下りで足が前に滑っても、爪が当たらない余白
  • 店内を15分ほど歩き、下りを想定してつま先を床に押し当てる動作を繰り返す。かかとが浮くなら、そのサイズは合っていない

結果、普段のスニーカーより半サイズ上を選んだ。この靴に変えてから、靴擦れは一度も起きていない。クッション性や防水性の前に、「足が靴の中で暴れない」ことが効いている。

幅広・甲高の人は、標準モデルで判断しないこと

サロモンの靴は全体にシャープな作りで、日本人に多い幅広・甲高の足だと窮屈に感じることがある。ここでサロモンを諦めてしまう人が多いのだが、現行のX ULTRA 5にはWIDE(幅広)モデルがある。前足部のボリュームが標準比で約12mm増えていて、一般に3E相当と言われる作りになる。

Caution

GORE-TEX採用モデルは、革靴のように「履いているうちに馴染んで伸びる」ことを期待できない。試着の時点で横方向に圧迫を感じるなら、その靴は合っていない。ハーフサイズ上か、WIDEモデルに切り替えて試す。

正直に書く。サロモンを勧めない人

ここを書かないレビューは広告と同じだと思っているので、弱点を並べる。

1. 1足を修理しながら長く履きたい人

サロモンの登山靴は、アッパーとソールを強力に圧着する製法のため、ソールの張り替えができない。サロモン自身も、ソール張替えが可能なモデルは無いと案内している。革の登山靴を10年、ソールを打ち替えながら履くという価値観の人には、根本的に合わない。

2. 登る頻度が低く、長期保管しがちな人

前述の加水分解の問題がある。年に1〜2回しか山に行かない人は、履き潰す前に寿命が来る可能性がある。頻度が低いほど、修理できて劣化しにくい素材の靴のほうが結果的に安く付くことがある。

3. 幅広・甲高で、WIDE展開のないモデルを狙っている人

WIDEがあるのは一部のモデルだけだ。欲しい色やモデルにWIDEがない場合、無理に標準を買うと、ほぼ確実に痛い思いをする。

4. アイゼンを使う本格的な雪山に行きたい人

X ULTRAシリーズは、アイゼン装着を前提とした冬靴ではない。雪山は別ジャンルとして靴を用意したほうがいい。

サロモンの登山靴は、普段使いできるのか

これもよく検索されている疑問なので答えておく。できる。というより、X ULTRAはもともとそういう思想で作られたシリーズだ。「玄関を出てから帰ってくるまで一足で」というコンセプトで2012年に始まっている。街寄りのデザインを求めるなら、X ULTRA 360のほうがより自然に馴染む。

ただし現実的な注意がひとつある。アスファルトはソールを確実に削る。街で履き潰した靴で山に入ると、ラグが丸まってグリップが落ちている。「滑る」と感じる原因が、実は摩耗だったというケースは珍しくない。通勤で毎日履くなら、山用とは分けたほうがいい。

それでも、この価格帯でサロモンを選ぶ理由

サロモンの靴は、正直かっこいい。ただ、それは飾りを足してかっこよくしているのではなく、機能を突き詰めた形がそのまま外に出ているからだと思っている。

ソールに刻まれたラグのパターンは、地面を捉えるための形状そのものだ。Quicklaceが舌の内側にしまい込まれるのは、枝に引っかけて転ばないためだ。足首を包むミッドカットのラインは、可動域を残しながら横ブレだけを止める位置で切られている。どれも用が先にあって、形が後から決まっている。だから古びない。

雪山の金具を作っていた会社が、山を走ることを経由して、歩くための靴にたどり着いた。その回り道の分だけ、サロモンは「歩く」を他のブランドとは違う角度から考えている。買っているのは靴の形ではなく、その角度のほうだ——というのが、私がこの価格帯を払っている理由になる。

まとめ:結局、どれを選べばいいか

最後に、この記事の要点を整理する。

  • 日帰り中心なら X ULTRA 5。防水が要るならGORE-TEX、足首が不安ならMID
  • 街と兼用したいなら X ULTRA 360重装備の縦走なら QUEST
  • 幅広・甲高なら、まずWIDEモデルを試着する。標準モデルの窮屈さでブランドごと判断しない
  • 「滑る」のは主に濡れた木道・苔・粘土質。これは条件の問題であり、対策できる
  • ソール張り替えは不可。加水分解もあるので、長期保管前提の買い方には向かない

サイズだけは、通販で完結させないほうがいい。厚手の靴下を持って店頭に行き、15分歩く。それだけで、下山後に「今日は足が痛くなかった」と気づける確率がはっきり上がる。合う靴というのは、履いた瞬間ではなく、脱いだときに分かる。

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